当研究所では肉体改造、つまり筋力トレーニングやダイエットなどについて研究し、その情報を発信しています。
そして、マッチョになるにしてもスリムになるにしても、筋肉というのはとても重要な存在です。
ですが、筋肉がどんなものでどんな風に動いているのか?そしてどんな性質を
持っているのか?ということをちゃんと知っているという人は、かなり少ないんじゃないでしょうか。
「いや、そんなことはいーから、どうやったら腹筋が割れるかとか、脚が細くなるのかとか教えてよ!」
という声が聞こえてきそうですが、筋肉についてちゃんと知っておけば、どんな運動にどんな効果があるのか、そしてどんな栄養が必要なのかが分かるようになるんです。
そして、
「どの部分を引き締めるには、体をどう動かせばいいか?」
ということも自分自身で判断できるようになります。
これ、かなり重要な事ですよね。
そもそも、「肉体改造」というのは、家で言えばリフォームみたいなものです。
自分でリフォームするなら、構造や材料についても知っておくべきでしょう。
ということで、この「筋肉教室」では、筋肉についての基礎知識を、基礎からまるっとみっちりと、細かく解説していきます。
ちょっとマニアックなことも書いてますが、筋肉について深く理解するのに役立つ知識なので、どうかじっくり読んでみてください。
筋肉の構造
医学的な話をすると、内臓を動かしている筋肉や表情を作っている筋肉など、人間の体にはかなり色々な種類があります。
ただ、当研究所のテーマは「肉体改造」なので、ここでは運動するときの主役である「骨格筋」を中心に説明しましょう。
骨格筋というのはその名前の通り、骨にくっついている筋肉です。
ただし、筋肉がそのまま骨にっくっついているのではなく、「腱」という組織が間に入っています。
骨格が丸太で筋肉がロープだとしたら、腱というのはロープを丸太につなぐための金具みたいなものだと考えてもらえれば分かりやすいでしょう。
そして、筋肉は一つの塊ではなく、たくさんの筋繊維が束のように集まって出来ています。
この構造を理解するには、綱引きの時につかう太いロープをイメージしてみてください。
離れてみると1本の太いロープ(筋肉)だけど、実は細い糸(筋繊維)が何本も束になっているという感じです。
なお、筋肉や腱はタンパク質という物質で出来ています。
「タンパク質」といえば、栄養素としてもおなじみですよね。
ただ、人間の体を作っているタンパク質は、食事などで入ってきた栄養がそのまま体の材料になったものではありません。
食べ物として体に入ってきたタンパク質は消化器官いったん細かく分解されてから、筋肉の形に再合成されます。
ちなみに、体脂肪はタンパク質ではなく脂質という別の物質です。
「運動しないでいたら筋肉が脂肪に変わった」なんていう人がいるけど、ガラスのコップが急にプラスチックに変わったりしないのと同じように、筋肉が脂肪になったり、脂肪が筋肉になったりということはあり得ません。
※ただし、筋肉が筋繊維の「束」の中に脂肪が入ることはあります。
筋肉の働き
筋肉が収縮することによって生まれる力が「筋力」です。
そして筋肉のはたらきを理解する上で重要なのが、この「収縮」つまり縮む時に筋力が生まれる」という事です。
縮むことで力を出し、伸びるときはほぼ無力なんです。
もう一度言いますが、回転する時でもなければ伸びる時でもなく、縮む時に力を発揮します。
これを理解していると、どんな動作にどこの筋肉が使われているのかが分かります。
例えば、腕を曲げるときのことを考えてみましょう。
肘を「引っ張りのちから」で曲げるためには、図のように関節が曲がる方向にある筋肉が縮む必要があるわけです。
ちなみに、これをやっているメインの筋肉が上腕二頭筋です。
実際に、こんな風に肘を曲げながら力こぶの部分を触ると、筋肉がギュッと縮んで固くなっていることが分かるでしょう。
それでは、逆に伸ばす時は?
もう分かりますよね。
上腕二頭筋の反対側、つまり背中側にある筋肉(上腕三頭筋)が縮むと、腕が伸びる力が働きます。
上腕二頭筋の場合と同じように、腕を強く伸ばしながら腕の後ろ側を触ると、上腕三頭筋が縮んで固くなっていることが分かるはずです。
同じように、腕を高く上げるときには肩の筋肉が、かかとを伸ばすときにはふくらはぎの筋肉が収縮します。
これを知っているだけで、どんな筋トレをすればどの筋肉に効果があるのかを、ある程度理解することができるのです。
そして筋肉は、神経からの命令によって動きます。
この命令というのは電気信号のことです。
強い電気信号が流れてくれば大きな筋力が、弱ければ小さな筋力で筋肉が収縮します。
ここで覚えておきたいのが、大きな筋力と小さな筋力の筋肉の動きの違いです。
「筋肉は細い筋繊維が束になってできている」ということはすで書きましたが、収縮するときにはある程度の太さの束が一つのグループになって働きます。
そして、例えば最大筋力の50%の力を出している時は、全てのグループが50%の力を出しているわけではありません。
半分のグループが100%の力を出していて、残りの半分は休んでいるんです。
例えば、筋肉の中に10人の作業員がいたとすると、「50%の力を出している状態」というのは、5人だけがフルパワーで頑張っていて、残りの5人が何もしていない状態ということです。
だから筋トレでは何度かバーベルやダンベルを上げ下げして
「もう疲れた・・・」
と思っても、働いていない筋肉は疲れてない(言い換えれば待機している)状態で残っています。
しかし、疲れたと思っても頑張って筋肉を動かそうとすると、先に働いていた筋肉がダウンするかわりに、仕方なく他の人が働き始めます。
だから筋トレでは、何セットかやったほうが効果的なのです。
本来なら一度に全部の筋繊維が動いたほうが大きな力が出るわけですが、どんなに頑張っても全ての筋繊維を収縮させること、つまり筋肉が本来持っている力を100%出すことはできないと言われている。
これは、全ての筋繊維が一度に収縮すると、発揮される筋力が大きすぎて骨折してしまったり、腱や筋肉が損傷してしまう可能性が高いからです。
仮に筋肉が100%の力で収縮した場合、理論上は何のトレーニングも積んでいない女性の筋力でも、片腕で大人の男性一人(60kg程度)を持ち上げることができます。
ちなみに「火事場の馬鹿力」という現象は、人間が生きるか死ぬかの状況に追い込まれた時に、筋肉に眠っている力の一部を発揮するために起こると考えられています。
筋肉の種類
骨格筋は、その性質によって大きく3つの種類に別れます。
・速筋(FG繊維:Fast glycolytic fibers)
・遅筋(SO繊維:Slow-oxidative)
・遅速筋(FOG繊維:Fast Oxidative glycolytic Fibres)
と、こんな風に専門用語が並ぶと眠くなりそうですね(苦笑)。
なのでここでは「速筋」と「遅筋」という2つの種類の筋肉に注目してみて下さい。
筋トレについて理解する上では、この2つだけを知っておけば十分だと思います。
簡単に言うと「速筋」というのは、その名の通り速いスピードと強い力で収縮する筋肉です。
見た目が白っぽい色をしているので、「白筋」とも呼ばれています。
速くて強いというと良いところばかりな印象を受けますが、残念ながら「すぐに疲れてしまう」という欠点を持っています。
もう一つの「遅筋」はパワーもスピードも速筋に劣るけれど、速筋よりも疲れにくく持久力に優れている筋肉です。
なぜ持久力があるのかというと、それは筋肉内に酸素を取り込む物質(ミオグロビン)を持っているためで、その物質によって赤っぽい色をしている。
だから別名は「赤筋」です。
陸上選手にたとえるなら、速筋が100m走が得意な短距離選手、遅筋が1万メートルとかマラソンを走るのが得意な長距離選手という感じでしょうか。
余談ですが魚にも白身魚と赤身の魚がいるのも筋肉の質が違うためです。
マグロやカツオなどの魚は長い距離を泳いで遠くの海を回遊するので、遅筋にあたる赤身、逆にエイやヒラメのような魚は、じっとしている時間が結構あって、いざという時にガバッと動けばいいので速筋にあたる白身がメインになっています。
そして、この速筋と遅筋の割合は人によって違います。
速筋が多い人は短距離走や重量挙げのようなスピード、パワーが必要なスポーツに適している筋肉の持ち主です。
逆に遅筋の割合が多い人は、長距離走やトライアスロンなど、スタミナが必要なスポーツに適しています。
はっきりした統計データはありませんが、世界レベルで活躍できる短距離選手なら速筋の割合が0%以上、長距離選手は、遅筋の割合が70%以上という話もあります。
そして・・・
残念ながら、どんなトレーニングを積んでも即金と遅筋の割合を変えることはできません。
なので、ある国ではオリンピックなどで勝てる優秀なスポーツ選手を育てるために、子供の頃に体質を調べて適性のあるスポーツをさせていたという噂もあったりします。
ただ、この「割合が変えられない」というのはあくまでも本数の話です。
例えば速筋の割合が少ない人でも、トレーニングによってその速筋の性能を上げれば、パワーやスピードをアップさせることは可能です。
遅筋の割合が少ない人も、トレーニングによってその遅筋の性能を上げれば、スタミナはつくということです。
トレーニングで強くなる筋肉
誰でも知っていることだと思いますが、正しい方法で筋トレをすると、筋肉の能力をアップさせることができます。
筋トレというのは、極端に言うと筋肉にダメージを与えることです。
筋トレによって筋肉が疲労したり、ミクロのレベルで傷ついたりすると、人間の体は「これはヤバイ!」と危機感を持ちます。
さらに、次に同じような事が起こった時のために準備しようとします。
この準備というのは、筋肉の傷ついた場所を修復して強化したり、よりスムーズに栄養が補給できるように筋肉につながる組織を改善したりすることです。
ただ回復するだけではなく、能力がアップした状態になるので、この現象は「超回復」なんて呼ばれています。
この時に重要なのが、超回復を起こすには以下の3つの要素が必要になることです。
1.適度に疲労させること
2.十分な栄養を取ること
3.しっかり休ませること
トレーニングはハードにやればやっただけ効果が大きいと思っている人も多いのですが、実はやりすぎると余計な疲労が溜まりすぎて成長が遅くなったり、怪我の原因になったりします。
また、壊れた組織を修復したり強化したりするには、当然そのための材料が必要になります。
だから十分な栄養補給が必要なのです。
そして、筋肉の修復や強化は体が休んでいる時に行われるので、運動した後には体をしっかりリラックスさせたり、睡眠時間を確保しないといけません。
筋肉の種類と筋トレ法
筋トレをするときには、筋肉の役割の違いについても知っておく必要があります。
速筋と遅筋はそれぞれ働き方が違うので、当然鍛え方にも違いがでてくるわけです。
例えば、パワーやスピードを強化したいのなら、速筋を鍛える方法で筋トレをすることになります。
一般的にバーベルやダンベル、マシンを使うようなウェイトトレーニングはほぼ速筋の筋力トレーニングだと考えていいでしょう。
速筋を鍛える場合、筋肉には強い負荷をかける必要があるので、少ない場合は3回とか5回、多くても10回から20回くらいしか繰り返せないような重さでトレーニングするのが一般的です。
逆に、持久力を強化したい場合は遅筋を鍛えるわけですが、この場合は、数十回、数百回と動作を繰り返せるような負荷を使ったり、○分間動作を繰り返すというような方法でトレーニングすることになります。
ちなみに、遅筋は鍛えてもほとんど太くなりません。
毎日死ぬほど走っているマラソンランナーの脚がプロレスラーのように太くならないのはそのためです。
マッチョな体を目指したいのなら、腕立てを何十回もやるより、バーベルなどを使って負荷の高い筋トレをしなくてはならないということです。
太さと力の関係
太い筋肉を持っている人は、いかにも「力が強そう」に見えますが、実際に筋肉の太さ=力の強さなのでしょうか?
その答えは「基本的にはYES」です。
筋肉が一度に出せる力というのはその断面積に比例するという特徴があります。
一応、数値としては筋肉の断面積で1平方センチメートルあたり4kgから10kgの力を発揮できると言われています。
ただ、太いほうが強いというのは「全体にそういう傾向がある」というだけであって、絶対にそうというわけではありません。
そもそも、
「1平方センチメートルあたり4から10kg」
ということは、単純に言えば筋肉の太さが同じでも最低で4、最高で10と、2.5倍くらいは力の差があってもおかしくないということです。
まず第一に考えられるのが、筋肉の種類による差です。
さっきも書きましたが、筋肉には、遅筋や速筋というような種類の違いがあるわけですから、細身でも速筋繊維が多い人の場合は
「筋肉はそんなに太くないのに、なんて力が強いんだ!」
という事が起こってもおかしくないわけです。
そして、筋肉の性能だけでなく「発揮できる筋力の違い」という意味では、他のも色々な要因が考えられます。
それらについて、項目別に書いてみましょう。
神経伝達の違い
脳が神経を通して「動け!」と命令した時に動く筋繊維の本数は、人や状況によって違います。
だから、より多くの筋繊維を一度に働かせることができれば、それだけ大きな力が発揮できることになるわけです。
トレーニングなどで筋肉が頻繁に使われていると、神経伝達がスムーズになって、筋肉の太さが同じでも発揮できる力はより大きくなっていきます。
周辺組織の構造の違い
私たちが「筋肉」だと思っているものは、純粋に筋繊維だけで出来ているわけではありません。
例えば筋肉の中には、筋肉に酸素や栄養を送る血管などの周辺組織も含まれています。
解剖などによって証明されたデータは見つかりませんでしたが、一般的にはボディービルダーのように量の多い筋トレメニューをこなしていると、筋肉と一緒に周辺の組織も発達するため、筋肉が太くなりやすいと考えられています。
つまり、筋繊維以外の組織の発達の度合いよって、筋肉の見た目上の太さは変わる場合があるということです。
筋肉の長さとスピードについて
一部の文献には、
「筋肉は長いほど収縮スピードが早い」
と書かれていますが、当研究所ではこれに関して別の見解を持っています。
これについては、また別のページで解説していくことにしましょう。
(管理人へのご連絡は不要です)