慣性とスポーツと肉体改造2
さて、それでは一つ前のページ「慣性とスポーツと肉体改造」に続いて、慣性の力がトレーニングやスポーツにどのような影響を与えているかについて解説していきたいと思います。
トレーニング負荷と慣性の関係
まずはスポーツの動作以前に、基礎体力をつけるための筋力トレーニングと慣性について見てみましょう。
筋力トレーニングとは筋肉に負荷をかけること、簡単に言うと筋肉を適度にイジメることで、より強い筋肉を手に入れるための作業です。
しかし、慣性の法則をよく理解しておかないと、一生懸命に鍛えているつもりでも筋肉にきちんと負荷がかかっていないという事にもなりかねないので注意が必要です。
この事については「筋トレとチーティング」でも少し触れましたが、具体的な例を挙げてもう一度説明しておきましょう。
例えばダンベルでアームカールを行う時、腕を少し前に振りながら肘を曲げてダンベルを持ち上げる人がいます。
しかし、ここで思い出してみてください。
物体には、動いているときはその運動状態を保とうとするのです。
だから、腕を前に振ってから肘を曲げようとすれば、その時点でダンベルは体の前の方向、つまり肘を曲げてダンベルを動かすべき方向に動こうとしているのです。
その慣性の力、言い換えれば「勢い」がある状態で肘を曲げても、筋肉にかかる力はダンベルの重さそのものではなく、
ダンベルの重さ-慣性の力
となります。
つまり、筋肉にその分だけ楽をさせてしまうことになるのです。
また別の例では、懸垂をする時に鉄棒に飛びついた瞬間にすぐ腕を曲げて体を持ち上げるというやり方をする人がいますが、これもあまり良い方法とは言えません。
なぜなら「鉄棒に飛びついた瞬間」というのは、まだジャンプしたときの力が多少残っているために、背中の筋肉にかかる負荷が、
体重-慣性の力
になっているからです。
懸垂をする時は、鉄棒をつかんだら腕をある程度伸ばして重心を落とし、それから1レップ目を開始するのが正しい方法と言えるでしょう。
慣性をトレーニングに応用する方法
知らず知らずのうちに勢いや反動の力がトレーニング負荷を弱めてしまうのとは反対に、慣性の力を有効活用する方法も存在しています。
例えばダンベルを肩にかついでジャンプするジャンピング・スクワットや、腕立て伏せで腕を伸ばすときに腕の力でジャンプするプライオメトリック(ジャンピング)・プッシュアップなどがそうです。
これらの種目では、着地するときに働いている慣性の力に逆らって勢い良く次のジャンプ動作に移ることで、瞬間的に筋肉に大きな負荷を与えるトレーニング方法なのです。
ただし、筋肉や関節にかかる負荷も大きいので、これらのトレーニング法については経験のあるトレーナーの指導のもとで行うことをお勧めします。
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