パンチに使う筋肉はどれだ?
打撃技がある格闘技、たとえばボクシングや空手、総合格闘技などのために筋トレをしている人にとって、パンチ力はとても重要な要素です。
中にはパンチ力を付けることを目的に筋力トレーニングをしている、というトレーニーもいるでしょう。
ところでパンチ力を決めているのは、いったいどの筋肉なんでしょうか?
基本は全身運動
ある程度筋トレに詳しい人なら分かると思いますが、スポーツでは一つの部分の筋肉だけを鍛えて能力がアップするということはほとんどありません。
たとえばパンチを打つ場合、まず一番最初に足を動かして重心移動を行い、それを下半身全体の筋肉から腰、腹部の筋肉を使って大きなひねりの力に変換し、最後に上半身を回転させつつ腕を前に突き出すわけです。
だからどんなハード・パンチャーでも、椅子に座って背中を背もたれに付けたままパンチを打とうとすれば、へなちょこパンチしか打てません。
細かい筋肉のことを考える前に、このことについては十分認識しておいてください。
直接はたらく筋肉は?
それでは次に、パンチを打つときに特に重要だと思われる、上半身の筋肉について考えてみましょう。
一般的に格闘技の世界ではパンチマッスル、つまりパンチ力を決めるのに重要な筋肉は、広背筋や脊柱起立筋群などの背中の筋肉だと言われています。
しかし、研究所長はこの「常識」は、かなり疑わしいと考えています。
というのも、人間の背中の筋肉は大まかに言えば、引っ張る動作を行う時に活躍する筋肉で、これらが強く収縮しても、腕を前に突き出す力は生まれないからです。
実際に筋肉に流れる電流を測定する機械(筋電図)を使用した実験でも、例えば右パンチを出すときに右の背中の筋肉はほとんど収縮していないことが分かっています。
それでは、どの筋肉が動いているかというと、右パンチなら右の大胸筋や三角筋、上腕三頭筋などの筋肉です。
これらはベンチプレスなどの時にも使われる「腕を前に突き出す筋肉」ですから、当然といえば当然の話でしょう。
パンチマッスルは不要?
それでは、パンチ力アップのために背中の筋肉は不要なのでしょうか?
いえ、決してそんな事はありません。
パンチを打つときの人間の体の動きを分析すると、右パンチを打つときには左手を引き、左パンチを打つときには右手を引く、という動作をしていることが分かります。
つまり、右パンチを出すときは左側の背中の筋肉が、左パンチを打つときは右側の背中の筋肉が体の回転を助け、パンチ力アップに力を貸しているのです。
特に何発もパンチを打ち続ける場合は、背中の筋肉が弱いと体の回転が鈍くなり、他の筋肉が強くてもパンチ力が発揮できません。
単純に腕を前に突き出す力だけで言えば、「パンチマッスル」は間違いなく大胸筋や三角筋など、体の前面の筋肉です。(上腕三頭筋は裏面ですが)
しかし、強いパンチをマシンガンのように打ち続けるには、広背筋や脊柱起立筋群などもしっかり鍛えておく必要があるということです。
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