運動能力のゴムひも理論

人間の運動能力というものは、色々な要素が複雑に関係しながらバランスを取り合って発揮されるものです。

だからこそ当研究所では「バランスが大事」とか「目的に合った方法でトレーニングを」ということをやたらと何度も書いている訳ですが、何でも言うのは簡単、そして実行するのは難しいもの。

実際にはトレーニング方法に偏りがあるために、一生懸命努力しているにも関わらずなかなか結果が付いてこない・・・という場合もあるでしょう。

そこで、バランスの重要性を意識するために当研究所が提唱する「運動能力のゴムひも理論」を紹介したいと思います。

ゴムひも理論とは

まず壁から2本の棒が出ていて、その間に長いゴムひもを張ったところを想像してください。

ゴムひもと棒

ちなみにこの2本の棒は、強い力を加えると上下にスライドするようになっています。

そして、それぞれの棒の位置はゴムの張力によって影響を受けます。
だから片方の棒をどんどん上に上げていくと、やがてゴムの力に引っ張られて、もう片方の棒もズルズルと上に上がっていく・・・といった具合です。

ゴムひもと棒その2

さて、今回は仮にこのゴムひもを「筋力」という枠で設定してみましょう。

棒の数は2本ではなく、筋トレ種目の数だけ存在すると考えてください。つまり1本の棒は1つの種目を表しているということです。

ゴムひもと棒その3

そして、それぞれの棒の並び順には意味があり、鍛える筋肉が近いほど、言い換えれば関係が深いものほど近く、関係が薄いものほど遠くなっています。

例えばベンチプレスと腕立て伏せには多少の違いがあるものの、胸や腕のほぼ同じ筋肉を鍛える種目なので「すぐお隣さん」くらいの位置にあります。

ベンチプレスと腕立て伏せの関係

だから、片方の棒を上げれば、もう片方の棒も引っ張られてかなり近い位置にくることになるという訳です。

関係が深い運動ほどお互いに影響しあう

腕立て伏せを普段全くやらなくても、ベンチプレスをやっていれば腕立て伏せの能力はある程度伸びます。

逆に腕立て伏せをガンガンやっている人ならベンチプレスで持ち上げられる重量は普通の人に比べればずっと高いと考えられます。

それに対して、例えばベンチプレスとスクワットはお互いにかなり遠い位置にあります。

トレーニング種目の関連性と距離

もちろん体を安定させるための筋肉の強さなど一部の共通点はありますので、お互いに影響がゼロというわけではありません。

ただ、基本的にスクワットとベンチプレスでは主役になる筋肉が全く違いますので、例えばベンチプレスを一生懸命やっていてもスクワットの能力が大きく伸びるということはあまりないと考えられるでしょう。

このように、運動能力同士はお互いに影響しあっていて、種類として近いものほどお互いに強い影響を与える、というのが「運動能力のゴムひも理論」の基礎になります。

次回からのコンテンツでは、さらに詳しい説明とトレーニングに応用するための考え方について触れて行きたいと思います。

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